3月2日、3月、再考


2月最後の日
明日には3月です。
明日には、卒業です。

今朝「明日、高校を卒業します」というメッセージに
背筋を正して、一度だけ深く息を吸って、吐いて
おめでとうございますと返してベッドに三角座りをした。

わたしがまだ、あたしだった頃。

いつの間にか着古してしまった制服から覗く膝小僧。
ふぞろいに並んだ机と甘く消された黒板の落書き。
聞き取りにくいラジカセから流れる英語とツルツルした紙面の教科書。
窓のふちにいる小さな虫をプツリと殺した気だるい夏の午後の授業。

もう思い出すことも難しくなった3月の、再考。

「一体何から卒業するんだろうね」なんてごちながら
涙もなく、来たるべき明日を信じて、笑顔で手を振り合ったハレの日。

同じ教室に詰め込まれたあたしたちの日々が甦るけれど
「また会おうね」と交わし合った約束以来
顔を見ていない人たちはたくさんいる。
おはよう、眠すぎ、6限だるい~、ノート見せて、また明日。
あんなに繰り返していたのにあなたにすらお元気ですかと
声をかけることのできなくなった距離。時の隔たり。

あなたとの出会い
あなたとの別れ
青春は、ちゃんと終わる。

かたちのない好きには行き場がないのか?
言葉にできない気持ちはないのと同じなのか?

あの頃からあたしたちは答えを知っていた。

懲りずにあこがれた今日をとことこ歩いているわたしは
まだ、あなたのやさしい目尻のしわで100年先まで眠りたい
今だって、あなたの肩から先、海の向こうの知らない世界を見たい。

 

果たされるのかも、果たされないのかもしれないけれど
一等にまっすぐな気持ちで抱き合って再会を約束した
あの時間のためだけに卒業というのはあったかもしれない。

きちんとさようならを言える別れがどれだけしあわせなことなのかを
今になってようやくわかるためだけに卒業はあったのかもしれない。



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