3月1日、3月

3がつの雨は
なんがつの雨よりも
淋しいはずだ。
だってそこには
ただよこたわる
さよならだけがある。


ふりかえったって
親しげに呼んだって
もどってはこないきのう。
一寸先は闇かもしれない。
まいにちこれでもかと思うほどに
であいとわかれをかじってみても
わらったり、泣いてしまうこと。
それはこのせかいの中で
もっともらしい うつくしさ。

あたしは、さよならするってのは
どういうことだろうとおもうと
いつだってすこし泣きたくなるんです。

あなたのもつ空気の匂いがするところを
離れるだけで、たったそれだけで
同じ空の下とはいったところで
あなたの人生をあたしは知ることが出来ない。
触ることも、聞くことも、見ることも。
欲を張っていいのなら、この小さなからだで
めいっぱいはかってみたかった。
そうおもうからです。

どんな道をとおってここに来たのかも
そのかすかな脈拍の
なんともいえないリズムのうちに秘めたものが
希望なのか、絶望なのか 
これからむかう場所がどこなのか
知れないあたしとあなたという人間が
さよならをいう3月。

赤い目をこすりもせず
すっとあげた右腕を
たおやかに揺らすあなたと
夢を見るなら
きっと3月がいい。

仰げば尊いのは正解のないあおいそら
あなたとなら途切れ途切れにでも
つづいていくさいわいを
このおさない手ですくって、
手指のすきまでいい
キラリとひかったそれを
見つけることをしてみたかった。

じぶん、だれか、人生
誠実でいなければならないとして

両の手じゃあかぞえ切れない不条理や
なつかしくて新しい
ふりおとされそうでも愛おしいせかい。
ぜんぶかかえてしまって
崩れおちそうになったって
あたしたちは素直に 
ときどきは
すがすがしい謙虚さをもって
だれかに親切でいたいと
願い続ける強さを持たなくては。
まっすぐで真摯な愛に焦がれ続けなければ。

3月の雨がやめば
3月の日差しは暖かいことを
知ることができる。

後悔ばかりが口をついてでたって
今 別離を経験するあたしたちは
こんなにも込み上げてくる何かを謳える。

忘れないでね
忘れないから






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