4月16日、気持ちいい風が吹いたんです

 
 
いつの間にか
ピンクとも白とも云えぬあの花の降りしきるまぼろしの季節を通り越していた
みどりは新しく、いつも懐かしく、
こんな風に重ねていく日々のあたたかさを伝える術をわたしは持ち合わせていない。
 
“わすれたい”と思ったことのない人生を、願ったことのない時間をさいわいに思います。
どうかわたしやあなたの走馬灯がいつまでも長く永く続きますよう
いつか、両手に抱きかかえて持っていけるのはそれだけだからね。
 
名指すことのできない祈りの在り処をあなただけは知っていて
その声に言葉なく出会うのだとしたら
わたしは、そっとその歌に耳をそばだてていたい。
からだを傾けていたい。
その歌でまたひとつそれらがこの世界の実在になっていく。
そうやってこの世界にあるあらゆるものを造りなおして
どうか、わたしに教えてほしい。
あなたのうたう歌がやさしければやさしいほど泣きたくなったのは
鳥かごの窓をそっと開けられたような気がしたからかもしれない。
 
 
あなたの名前を呼ぶみたいに
春の名を呼んでみたい。
 
あなたがわたしに与えた言葉が
ついに思い出になる前に
この春の名を呼んでみたい。
 
 
 
 

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