3月12日、home
とてもひさしぶりに夢をみた。
ライカの夢。
宇宙にはじめていった犬。
わたしが見たのはライカの夢だけど、
わたしたちにとってはライカが夢だった。
キュートでかしこいロシア生まれの犬。
人類の壮大な夢。
とまんない科学の先端。
1957年、帰還予定のない人工衛星に乗って
ライカはたった1匹で宇宙への旅に出た。
打ち上げの轟音と、船内の急な温度上昇に驚いて
ライカの心拍数は一気に3倍まで跳ね上がる。
最初からライカが地球に帰ってくることはありえなかった。
打ち上げの10日後には、毒の入ったえさを食べて安楽死させられた。
船の欠陥によって40度にまで気温が上昇した船内で4日後には死んでいた。
ストレスで打ち上げの数時間後には死んでいた。
本当のことは分からないけれど
わたしたちは、そこまでの恐怖を知らないままに生きてゆくんだろうか。
そこまでの恐怖に心の焦点をあてることを知らないまま生きてゆくんだろうか。
夢のなかでライカは目をしっかりとあけていた。
地上で練習した時みたく
きちんと、目をあけていた。
夢の中でしっかりとライカのことを見たけれど、
先にライカが見えなくなったのはわたしだった。
ライカはにじんでしまった。
夢の中のわたしの涙に。
暗記科目の教科書の黒インクに。
進歩にのろわれた時代の波に。
わたしが言いたいのはライカがかわいそうということや
動物実験なんてやめようとかそんなことじゃない。
いつも足りないのはだれかやなにかやみらいなんかを思いやる心だという話なんです。
科学も技術もとまらない。
ガス室で死んだ人間の匂いを嗅いでも。
チェルノブイリに四葉が群生をしても。
「うち、原発近くてさあ」仕方なさそうに笑いながら
家族の心配をする友だちの顔を見ても。
たいせつなことほど
いとも容易くすり替えられてくような気がします。
みんなまんまとだまされてくような気がします。
せめて帰る場所を、と思うのにそれすら失くしそうで。
それすら間に合わないようなスピードで。
わたしたちはどこに行くのかわからないままだ。
わたしたちはどこに行きたいのかもわからないままだ。
わたしたちは自殺することをやめられないんだろうか。
わたしたちこそがライカなんだと気付くのはいつなんだろうか。
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