4月8日、修羅の歌

ああ、かがやきの4月の底を
はぎしり燃えてゆききする
おれはひとりの修羅なのだ


まだ薄っすらと暗い午前5時
まっしろな服を着て外に出る
4月の輪郭
風の輪郭
わたしの輪郭
もう見上げても冬の空は、ない

「汽車を待つ君の横でぼくは時計を気にしてる」
季節外れの雪は降らなかった。
永遠を約束するような季節に、
いとも簡単に騙されている。

もうすぐミライ元年です

「時がゆけば幼い君も大人になると気づかないまま」
なごり雪が教えてくれるように未来が
その真白を飛び散らせながら待ち伏せている。

だというのにわたしというやつは

すぐそばにある当然の未来に、まるで気が付かないまま
きみのいない未来に、まるで気が付かないまま

不在のきみに天国を背負わせて
気が付いたら大人になっていました。


ひらひら、が似合う
ピンクより白、が似合う
針金の木にぶら下がる花の名が
きみのふるさとの岸辺へと今年も帰ってゆきます。
まだ、忘れられない。
まだ、捨てることなどできない。
きみの岸辺。そのカタチ。

あらゆる風景を染め上げる花びら一枚拾い上げたら
それはまるで、きみから一度だけもらったことのある
手紙のようでした。

うっとうしいくらいに
眩しくやわらかな日向の窓の外に吹く風は
花のにおいを運び、
わたしの狂気を土に返し、
きみをわたしに届けます。

くちずさむ歌にきみの名前を埋めてみれば
よろこび、せつなさで溢れた体は
器でしかないことを知る。

洗面器の水面がゆら、と揺れる。


ああ、

すべてを賭けて信じることは
いつもとても難しいけれど
すこしでいい、
すこしだけでいいから神様になりたい

わたしを忘れ、きみを生きて
少しづずつ存在してゆきたい。

それにしても風が強い
春一番はきみの声
かき消すことなどできぬ、きみの声





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