6月30日、a sad little town


目の灼けつくと同時に、人生がヒリヒリとする
眼鏡を外すと乱視
彼女の意識はいよいよはっきりする

浴室のランプは湿った空気をまとった白色で
そこに充ちた白は羽ばたきによって放たれた水蒸気
起きたばかりの歌鳥がそうっとしまい込んでいた愛着のあるやわらかな空気
 
湯船の白色は、あらゆる失敗やあらゆる後悔さえその微笑みで包んでしまう清潔さ
朝と夜ではまるで違って見えた
夜には、もう持ち主が部屋の片隅に追いやってしまった
眠られることのない眠りを留める白となった
 
そのような世界では、湯船と壁の継ぎ目のグズグズなパッキンが唯一、正しい
コンタクトプリントに焼き付けられた革命家のような一本線がこちらを見遣る
言葉を持たぬ彼女にとってそれは
どこか遠くの波打ち際にものさしでスッと引かれた水平線であった
 
行ったことなどなくて良かった
ここが望んだ場所ではなかった

ああけれど、もしかすると
フィンランドアイスランド、アラスカの水平線かもしれなかった

それならば、それは名付ける必要のない水平線であった
 
 
「 そんな風に見ていては、水平線は存在しない
     視線が水平線をつくるんだ
   まばたきする度に崩れる一本の糸 」
 
 
引用:アルベルト・ルイ=サンチェス "空気の名前"

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