7月13日、夜に失くす

 
夜が来るのがこわいという感覚は久しぶりだった
それはきっとこれからやってくる季節があまりにも生々しいから。
立ちのぼってくる土の匂いとか、風に揺れる草の匂いがふんだんに混じった
湿度のこもった、さながら水みたいな空気が柔らかくわたしの喉を刺す。
 
 
きみを間違えないようにそっとその名前を携帯で確かめるみたいなうしろめたさ
うしろめたさはいつも心の片隅にいて、そんなものがわたしを均している。
 
のぼってくる朝の光とともに煙草を何本か吸った。
きみはまだ真っ白で清潔な布団の中に潜り込んでいる
それはまるで未来を見ているかのようで
わたしには朝日よりもきみが眩しかった
 
撮ったものがきみを、わたしを、当たり前に肯定するから
愚かだとしても、それだけで生きていけるような気持ちになる。
ただしさとかまちがいを盾にして生きてはいけない体に生まれて
その愚かさが、切なく、甘いシロップみたいにそこかしこにしみわたる。
 
きみがうつくしいのは
世界がうつくしいのと同義だ
 
わたしが愚かなのは
世界が愚かなのとよく似ている
 
せめて、すべて許せますように、と
枕元の聖母に祈る朝。
 
 
 
 
 
 
 

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