9月7日、あの夢をなぞって


どうして誰かを想うとき、
わたしはこんなに悲しくなってしまうんだろう。

あなたが本質的に残像だってことが頼りなくて
手をぐっと握ってしまう。
目の前でよく笑う、よく口元を触る、
髪を撫でるあなたの一挙手一投足が
ほんの少し遅れてわたしの頭に認識される。
そのほんの少しが悲しくて仕方がない。
あなたはすぐにわたしの歴史になってしまうのだ。
わたしという水脈、地層に飲み込まれて
何十億年も前の記憶に繋がっていく。

大きなものに目を向けていると
些細なことがこれまた悲しくなる。
たとえば、あなたの生活のことを想う。
テレビを見てあなたが笑う。
どうして笑えるんだろうと、思う。
だって死んじゃうのに。
いつか死んでしまうのに
なんでテレビなんて見てられるのって。
そんな時間があるなら会いたい。触れていたい。
会っても会っても、
死んじゃったらまだ会いたかったって思うのに。
できるなら、あたたかいあなたに触れていたい。
冷たくなったら冷たくなったで
わたしはそのときあなたをいとしくおもうけれど
できればぬくいあなたがいい。
これってわがままかな?

あなたはすぐにわたしの歴史になってしまうのだ。
歴史の天使になってしまうのだ。
でも、天使は見つけた方がいい。
悲しさは拭えないけれど、
あなたが天使ならばわたしは嬉しい。


0コメント

  • 1000 / 1000